数時間後、
「っは〜、疲れたあ。」
「お疲れ様でした。」
とんとんと自分の肩を叩きながらフェリシアとアツェムがエリシエの座っているテーブルに戻って来た。
だが、
「あれ?」
「おや?」
二人の視線の先には、飲み終わったカップが一つで寂しそうにしているテーブルだった。
「エリシエさん?」
フェリシアが辺りを見回すと、なぜか彼等の後ろから声がした。
「あの、」
「うわひゃ!?」
意図しない所からの出現にフェリシアが奇声を上げる。
「あ、すみません。驚かすつもりは」
「い、いえ、」
まだ驚きが冷めやまぬといったフェリシアに対し、
「気にしなくて良いですよ。」
あくまで何事にも動じないアツェムが返す。
「あんたが言うな。」
一言そうアツェムに文句を言うと、フェリシアはエリシエの方に向き直った。
「でも、何で後ろから?そっちって裏に出る門があるだけなのに・・・」
そう、彼女の後ろは直ぐ壁で、裏に出る扉以外何も無かった。
それ故に、彼がそこにいる筈無いと踏んでいたのだ。
「あ、えっと、その、トイレは・・・」
その質問に、フェリシアは事の内容を理解した。
ようはトイレを探して迷った、と言うだけらしい。
恥ずかしかったのかそれとも我慢のせいか、エリシエの顔は幾分朱を帯びていた。
フェリシアはそれを見て笑いを抑えながら、
「あはは、ごめんごめん、そういうこと、えっと、トイレはそっちのかどを曲がって左ですよ。」
思わずタメ口になってしまったのを直し説明すると、エリシエはふらふらと足元がおぼつかない様子で歩いていった。
「あはは、あんなに我慢してたんだ。もう少し早く帰ってきてあげたらよかったね。」
からからと笑いながら同意を求めるフェリシア。
「……そうですね、もう少し早く帰ってきたらよかったですね。」
アツェムもうなずいてそれに同意した。
そうして数分、フェリシアとアツェムがエリシエの座っていたテーブルで談笑していると、エリシエが帰ってきた。
「あ、あの、お待たせしました。」
エリシエはすっきりしたような感じにどこか照れを混じらせて角から現れる。
それを見てバツが悪いのだろうといち早く感じたフェリシアがさも気にするなと言う感じで話の流れを変えた。
「さて! 仕事も落ちついたし、食器の片付けなんかは私に任せて解読作業を進めて下さい、アツェム、真面目にやりなさいよ。」
エリシエに作業の再開を促し、アツェムに軽口を叩きながらフェリシアはカウンターの奥に引っ込んでいった。
「ふむ、私はいつも真面目なんですけどねぇ。まあ、それは置いといて、さてと、再開しましょうか?」
フェリシアの小言に不満げなため息とセリフを残して、アツェムは古文書を開くとエリシエにそう尋ねる。
「えっ? あっ……はい。」
話の流れについて行けなかったのか、何かに気でもとられていたのか、エリシエは曖昧な反応をした後にアツェムの言葉に同意した。
「え〜と、どこまでやりましたっけ。」
「確か、洞窟の場所が特定できたんですよね。」
「ああ、そうそう、よく覚えてましたねエリシエ君。じゃあ、続きから……」
二人はそれから閉店まで解読作業を進めた。
この甲斐あって、どうやらその洞窟にあるのは剣が封印されているらしく、また、守護者なるものもいるということが判明した。
また、これ以降は特に情報らしい情報もなく、解読作業は一応の終了を迎えたのだった。
少なくとも、アツェムとフェリシアはそう思っていた。
数日後王立研究所から探索隊に加わるようにと言う王の勅命上が来るまでは…………。
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