特研と言えば知る人ぞ知るエリート機関、その権力は時に王族すら凌ぐと言われている。
遥か昔の遺跡、古文書の解読を主な仕事としているその超エリート集団の印が、眼鏡の青年の襟元で光っていた。
そんな超の付くお偉いさんを犯罪者と間違え、あまつさえ憲兵に突き出そうとまで考えていた事にフェリシアは激しい後悔の念を感じた。
もし相手がその気ならこっちが逆に憲兵に捕まる事になるのだ。
一方、犯罪者にされそうになった眼鏡の青年は、
「あ、はい、その、実はウェルザイム王立特別遺跡研究機関の所属で、エリシエ・マウル・フェジスと言います。」
そう言って、帽子を取り二人に向かって自己紹介していた。
「アツェム・ガルジャスと言います。よろしくお願いしますね。」
それ答えるかのようにアツェムも自己紹介をした。
「・・・・・・」
だが、フェリシアはただ固まっていた。
「フェリシアさん?」
アツェムが驚きと後悔のあまり硬直している看板娘の意識を呼び戻す。
瞬間。
「す」
「「す?」」
男性陣二人の疑問の声が重なった所で。
「すいませんでした!!!!!」
店中の品物が倒れるかのような大音量の謝罪の言葉が二人の耳を貫いた。
店長は、ちゃっかり耳を指で塞いでたりする。
彼女はかなり取り乱していて、まるで壊れた人形のように何度もぺこぺこと平謝りをしていたが、
「あ、いえ、僕も誤解されるような態度を取ってしまったのにも原因がありますし・・えと、あんまり気にしないで下さい。」
の一言でどうにか落ち着きを取り戻したようだった。
アツェムの方は、
「すいませんでしたね。彼女早とちりさんで」
などと、のほほんとした口調で言っていた。
その誰に対しても変わらない態度はさすがといえる。
「いえ、皆にもお前はオドオドしすぎだ、とか言われてますから。」
眼鏡の青年、エリシエはどうやらそんなアツェムを悪く思っていないらしい。
その後二人は端から見れば古くからの友人のような親しみのこもった会話をしていた。
一方、落ち着きを取り戻したフェリシアはそんな二人を唖然と見つめている。
特研の人間に対しこんな気軽に話をするなど、この町中探しても彼くらいなものだ。
そして、二人の会話が一区切り付くと、フェリシアがエリシエに話しかけた。
「で、でも、何で特研の人がこんな所に?」
当然の質問だ。特研の人間がこんな町の、こんな道具屋に来るなどまずありえない。
彼女の質問を受けると、エリシエは困ったような笑いを浮かべてここに来るまでの経緯を話し始めた。
「え、ええ、実は・・・」
彼の語った事をまとめると、
どうやら、彼の持ってきた古文書はかなりの年代物として見られ、研究員総出で解読を進めていたらしい。
だが、彼を見ても判るように研究者といえど古文書に使われている言語を全て解読できるはずも無い。
それどころか、意味を取り違えて全く違う訳をしているのが現状だった。
当然、うまく情報が得られる事も無く、結局この古文書は保留扱いになったそうだ。
解読の進まない大物よりも、小物だが確実に解読できるものを選んだらしい。
もっとも、その小物もうまく訳されているかははなはだ疑問だが。
そういう訳でこの古文書は倉庫にしまってあったらしいのだが、エリシエはこの本に特別な執着があるようだった。
詳しくは語らなかったが、この本に載っていた紋章が彼の家にも残っていて、それで何が書かれているのか、自分とどんな関係なのかを知りたい。
と言う事らしかった。
フェリシアは
「ふぅん。そりゃやっぱ気になるよねぇ。私も古文書に家の家紋とか載ってたら絶対解き明かしたいし、財宝とかあったら絶っっ対見つけたいしね。あ、いえ、見つけたい、と思います。あ、あはははは」
敬語を使うのに慣れていないのだろう、彼女は気まずそうに笑って誤魔化していた。
それを見かねてアツェムが助け舟を出す。
「まぁ、そう言う訳でしたら、微力ながらお手伝いしましょうかね。解読は得意ですから。」
その言葉にエリシエは困ったような表情を浮かべていた。
何かを言い出そうかどうしようか迷ってる、と言う表現がぴったり来ると二人は内心そう思った事だろう。
「何か聞きたい事があるのでしたら、遠慮なくどうぞ。」
アツェムが柔らかい笑みを浮かべて促した。
一方フェリシアは、何かを考えているようだった。
アツェムの言葉にエリシエが意を決したように口を開く。
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