「……おや?」
「ん? どうかしたのアツェム?」
洞窟を見た瞬間アツェムの表情が一瞬変わった事に気付いたフェリシアが不思議そうな顔をする。
「いえ、何と言うか、見覚えが――」
「アツェムさーん!! フェリシアさーん!!」
そこへアツェムの言葉を遮り研究員の一人が二人の下へと駆け寄ってきた。
言うまでもなくエリシエである。
「あれ? どうしたんですかエリシエさん?」
フェリシアが駆けてきたエリシエに尋ねる。
「実はちょっと協力して欲しくて、お願いできますか?」
エリシエがアツェムの方を見て尋ねてくる。
「ええ、構いませんよ、じゃあフェリシアさん、行きましょうか」
断ることも無くアツェムは研究員達の方へ向かって行った。
その途中、
「ねえアツェム、さっきなんか言おうとしてなかった?」
先程の事を思い出してフェリシアが尋ねた。
「あはは、いえ、なんでもないですよ」
「ふ〜ん、そ。」
フェリシアに特に興味があったわけでもないのと、研究員達の視線が突き刺さり始めた事もあり、二人は研究員達の注目している物体へと注意を向けた。
どうやら洞窟内部の地図が書いてある石盤のようだ。
「おや、洞窟内の地図ですか」
その言葉にエリシエが反応する。
「ええ、そうなんですけど、上手く解読できないんですよ」
「おい、エリシエ」
「多少恥ずかしくてもここで立ち止まるよりましですよ、グランツさん」
その言葉にグランツが顔をしかめる。
研究仲間をたしなめつつ、エリシエはアツェムに石版の解読を依頼した。
アツェムとフェリシアはは軽く石盤を眺める。
「ふむふむ、成る程」
「へえ、やっぱり相当古い物ね。 ん〜……駄目だ。 さっぱりわかんない。 アツェム、なんて書いてある、の?」
フェリシアがひとしきり考え終わってアツェムに尋ねる、と。
「ん? あ、ちょっとアツェム!?」
既に彼の姿は彼女から遠く離れたところにあった。
それだけならまだしも、
「え? あ、ちょっと、アツェムさん?」
「おい貴様! 解読はどうした!!」
呼び止める周囲の声も無視して、あろう事か足早に洞窟内へ入っていってしまったのだ。
急いで後を追う探索隊とフェリシア。
「あ、あの、アツェムさんどうかしたんですか?」
「さあ? いきなり行っちゃって私にもさっぱり」
「ふん、どうせ解読できなかったんで誤魔化したに決まっている」
「あ〜ら、アツェムはそこいらの研究員様みたく勉強不足のくせにプライドばっか高い役立たずじゃありませんから〜。 あ、エリシエさんは別ですよ」
「フェ、フェリシアさん」
「き、貴様……」
「悔しかったらさっきの石盤解読してみなさいよ! 事あるごとにこっちを目の敵にしてさ! ほんっともう最悪!」
ここに来るまでに相当溜まっていたのか、フェリシアと研究員は生来の敵同士のような剣呑な言い合いをしつつも、アツェムの後を追って狭い通路を我先にと駆けてゆく。
彼らがアツェムに追いついたのは、入り口からの狭い通路を抜けて、広間とも言える場所へ出た時だった。
アツェムはその広間の中心らしきところで、一人何をするでもなく佇んでいるようだ。
やっと姿を確認してフェリシアとエリシエが安堵し、探索隊がいきなりの行動に詰め寄ろうとする。
瞬間――衝撃。
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