白雪の町 〜ある日の情景〜
「ねえ」
唐突にフェリシアが目の前で小動物と奮闘している、と言うか一方的にやられているアツェムに話しかけた。
「いたたたた・・・・・はい?」
彼はやられながら彼女の方に振り向く。
小動物のほうも彼女に遠慮してか、じきに彼を鬱憤晴らしに使う事は無くなった。
「あんたさ、ここに居るようになった夜のこと、覚えてる?」
真剣な顔をしてフェリシアはアツェムをみた。
彼は食後のコーヒーを飲みつつ、
「ええ、確か三週間程度前の事ですよね。まだ記憶にありますが、それが何か?」
「あんたってさ、確かアルツェリア文字よりずいぶん前の言葉知ってたよね。」
「ええ、まぁ。」
と、ここでフェリシアが深呼吸。
「まさか、アツェムって偉い人?」
「・・・・・・・・はい?」
話の流れがわからずアツェムは聞き返す。
「だから、アツェムってさ王国研究所に関係ある人なの?」
「それはまた、どうして?」
アツェムには全くわけが判らない。
「どうしてって、普通そんな昔の言葉知ってる人って言ったら王国研究所の古文書解読者くらいしかいないじゃない。王国研究所にいる人なんて言ったら皆エリートとかお偉いさんだし。」
ここまで言われてようやくアツェムは質問の意味がわかった。
「ああ、成る程。つまり私がその研究員ではないかと?」
「違うの?少なくともあんた人間にまぎれて暮らしてたんでしょ?だったらそんな文字覚える場所なんて無いじゃない。」
不思議そうな目でアツェムを見るフェリシア。
しかし、当のアツェムはしれっと答えた。
「いえ、覚える場所というよりも私が生まれた時はこの文字以外文字と呼べるもの無かったですから。前に言った筈ですけど?」
フェリシアは思い出すような仕草で、
「え〜と、・・・・・言ったっけ?」
そんな言葉が返ってきた。
どうやら前の時は混乱などの複雑な心境からアツェムの話があまり入っていないようだった。
「ちゃんと言いましたよ。ああ、因みに私は何処の職にも就いていませんよ。気ままな旅暮らしです。」
笑いながら彼が彼女の疑問を晴らすように答える。
しかし、彼女は今度は別の疑問に悩まされる事となった。
「いまだにそんな言葉使ってる地域あるの?あんた出身は?」
「生まれた場所ですか、えーと、確かあそこは・・・・・そう、グェレリヲス地方のハーメイソンという国ですね。」
その答えを聞き、フェリシアが硬直した。
「・・・待った。あんた、本気で言ってる?」
からかわれているのだろうかとアツェムを真偽を見極めるような目で見ながら彼女は言った。
その様子は睨んでいる意外に傍目からは見えようも無いのだが。
それも当然だ、今アツェムが言った所はよく冒険者が解読して欲しいと持ってくる古文書に超古代の国として出てくる場所の一つだったのだ。
地方はともかく国の名前が同じという事はアツェムは超古代の文明人という事になる。
彼の見た目はどう見ても20代だ。
もと化け物といえど、とても数千歳には思えない。
「こんな事で嘘を言ってどうするんですか?」
アツェムの方は笑いながら自分に向けられる視線に困っていた。
その表情からアツェムが嘘を言っているとは考えにくい。
今度はフェリシアは青くなった。
だが、今までの情報から得られる事は一つだ。
そして、彼が三週間前に敵に言った一言を思い出したのだから余計にその事は真実味を帯び始めた。
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