彼女は広場に居た。
この町のモデルとなった聖女を模した像がある広場。
彼女自身どうやってここに来たのか覚えていなかった。
すでに瞳に光は無い。どうしてここに居るのかも彼女には判っていなかった。
ただ、その像の前に、雪が降り続ける中、彼女は立ち尽くしていた。
影が現れる、地面が盛り上がったかと思うと、それが黒く染まって行き、彼女の前にあわられた影と同じ形となった。
「願いは叶えた。・・・・代償を貰う、汝の魂を貰う。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女に反応は無い。既に何も彼女は考えられない。
考える事を放棄した。感じる事を放棄した。
彼女はもう、壊れてしまったのだ。
「汝の魂、喰らわせて貰うぞ―――――――」
影の手が彼女の首に伸びる。
ズグリュッ!!!!
その時彼女の目に映ったのは、自分に伸びてくる黒い手
そして、それに突き刺さった。海のように深い、刃・・・・・・
「がぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!」
影が苦痛の咆哮を上げた。
「・・・・ふふ、御招待に応えて頂き、恐悦至極に存じます。フェルマ・イェツ・ロエグリョム様。」
影の後ろ、建物に、一人の男が立っていた。
白い髪が満月に照らされ、艶やかに輝いている。
その髪と声を、彼女は、知っていた・・・・。
彼女の心に再生の息吹が生まれる。
アレハ・・・・ダレダロウ・・?
ワタシヲ・・・・・タスケテくれた?
わたしを、しっている?
わたしが、・・・・知っている。
知っている!私は!彼を知っている!!!
「あ、あああ、」
彼女の目に光が、顔に表情が戻る。
「死んで、なかったんだぁ。」
彼女の目に涙が溢れる。この悪魔の手より抜け出たものが居た。
自分を知っているものが生きていた。その喜びが、彼女の心を呼び戻す。
「一日ぶりですね。お店に行ってあげられなくてすいませんでした。色々と忙しかったものですから。」
笑いながら男が話した。
だが、彼女はそんな事など気にしない。
今彼女が気にしている事は一つだった。
「逃げて!!早く!!殺される!!!だから早く逃げて!!!」
もう彼女は誰も消えて欲しく無かった。
だから彼女は叫ぶ、唯一生き残った彼に向かって自身の力の限り。
だが、
「そのお願いは聞けません。すみませんね。でも、せっかく探し物が見つかったんです。ここで逃げたら探した意味がないじゃないですか。」
と、いつの間にか彼女の隣に来ていた男は笑いながらあっさり否定してしまった。
そこまで聞いて、彼女の中に疑問が生じる。
そして、今の彼女にそれを胸に留めて置く様な理性も余裕も無かった。
「探し物・・・・って、まさか!?でも、これの名前も知ってるみたいだし、さっき、様って。まさか、貴方もこいつの・・・・・」
仲間、
そう言いかけた彼女を男は制する。
「仲間を傷つけますか?まぁ、時間が無いので手短に言いますが、私はあれの敵です。そして、貴方の味方ですよ。」
そう笑いながら答える。すると、
「グゥゥゥゥ、何のマネだ!!アツェム・イェツ・ガルジャス!!!!」
腕の回復に専念していた影、フェルマが、話せる様になるとすぐに男に食いかかってきた。
「お久しぶりです、フェルマ・イェツ・ロエグリョムさん。1000年ぶりですか。」
そういって懐かしむように言った。
「貴様!!答えろ!!われらは互いに同種の筈、何故そちら側の手助けをする!!!」
明らかにフェルマは息を荒げ怒りによって興奮していた。
その会話の様子から、彼女もこの男が影と同じ種族なのかと言うことが判り、驚きの表情で男を見た。
「ふふ、すみませんね。私はもう貴方と同じではないんですよ。同じだったら貴方を攻撃するわけないじゃないですか。」
笑いながら、男はやれやれといったポーズをとる。
「な、なんだと!!貴様!!何が違うと・・・」
フェルマが言い終わる前に男は、アツェムは言った。
「人間にね、惚れてしまいまして。」
「な・・・・・!!!!」
これにはさすがのフェルマも度肝を抜かれたのか、呆気に取られていた。
「もう私は魂喰らいではないんですよ。残念ながら、ね。」
といって、アツェムは左手の甲を見せた。
イェツ・ナ・ロンド・レグバリウス
「っ!!・・・・・・消魂喰生再の印・・・・・」
驚愕に燃えるような赤い目を見開くフェルマ
「馬鹿な・・・・そんなものをしたら、貴様はもう・・・・」
「ええ、二度と魂を食べる事は出来ません。でも、再構成の先を人間に設定しましたから。人間の食べ物を食べる事で力は蓄えられます。まぁ、ずいぶんと効率は悪いですけどね。」
笑って答えるアツェムにフェリシアはついて行けない様だった。
「さっきから何なのよ!訳わかんない言葉並べて、貴方、私の味方なの!敵なの!!」
不安にかられ、それをアツェムにぶつけるフェリシア。
だが、アツェムはそんな行動をとった彼女に優しく言った。
「ちゃんと言ったじゃないですか。味方ですよ。」
と、フェリシアに笑いかける。
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