「ふう、お疲れ様でしたー。」
「はい、気をつけて帰るんだよ。今度は、怪しい人を家に入れないようにね!」
「・・・はは、判ってますよ〜。」
この人、あんなに忙しかった跡なのに朝話した事ちゃっかり覚えてるし。
彼女はそう思わざるを得なかった。
この日、彼女は店長の記憶力の良さを改めて知った。
その後、帰路についている最中、彼女は家にいる居候に食べさせる物を作る為に材料を買うのを思い出した。
「昼に一度帰って作ってあげたけど、あの食べっぷりだと多分もう無くなってるよね。うん。この調子で行けば結構早く良くなるかも。」
そうして、適当に食べ物を見繕って買った時、辺りは暗くなり始めていた。
そして、もう少しで家に着くと彼女が思った頃、彼女の前に数人の人が現れる。
顔は見えなかった。何をされたのかも彼女は判らなかった。ただ、急に彼女の視界は暗転した。
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気がついた時、彼女の視界に映る場所はどこかの倉庫の中へと変わっていた。
「ん。・・・・あれ、何でこんなトコに居るんだろ。・・・・・・・って、縛られてる!」
状況を把握した彼女の前に中年の男が現れる。
「んっふふふ。気がついたかい?」
彼女はその顔に見覚えがあった。前に振った男の一人。
成り上がりの商人で人気、人徳、噂、全て最低。
人の噂など彼女は気にしない。判断理由は、彼の態度にあった。
いきなり彼女の前に札束を出し、自分のものになったらこれをくれてやると言い放ったのである。
そして、断ったら店を潰してやるとも・・・。
もちろん彼女は断った。店に関しては店長が
「ふふ、心配御無用。フェリシアちゃんは自分の事を考える事!」
と、行ってくれたおかげもある。
だが、それにこの男はひどく憤慨して、下劣な捨て台詞と共に彼女達の前から消えたのだった。
「なんなんですか?こんな事して。」
怯えた様子は見せたら負けだ。
そう思った彼女は気丈な態度でこの男に接した。
「いや〜、君のことがどうしても忘れられなくて、僕の部下たちが協力するって言うからさぁ。」
「ふざけないで下さい。早くこのロープ、解いてもらえますか?」
全く動じる事のない彼女に商人はつまらなそうである。
だが、不意に、その顔に下卑た笑いが浮かんだ。
「そうだなぁ、君が僕のペットになってくれるなら外してあげても良いよ?どうかご主人様。私を貴方様のペットとして飼って下さいって、動物みたいに舌出して涎垂らしながら土下座しな。ふふふ、できるかなぁ?まぁ、出来ないんならずっとこの状態のままなだけだけどね。」
男が思いついた考えは彼女に対してこの上ない侮辱であった。その瞬間、彼女は自分の口が理性を押しのけるのを感じた。
怒りに染まった口が、その怒りを男に向かって叩きつける。
「・・・・あなたの馬鹿に付き合っている暇はありません。そんなだからあなたは人徳が無いなんて言われるんです。一度鏡でも見たらどうですか?その薄汚いたるんだ害虫にも劣る顔に礼儀が無いと言う事がありありと出てます。人間の前に出るならせめて人間の仮面でも被る位の知恵は無いんですか?この最低の恥知らずの害悪生物!貴方の顔を見るより死んだ方が数万倍幸せです。」
自分の置かれた状況もすでに彼女から抜け落ちていた。
前々から激昂すると何も考えずに怒りをぶつけるのは悪い癖だと周りから言われてきたが、今回ほど彼女がその欠点を自覚し、後悔した事は無かっただろう。
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