礼儀に付いて説教される事、更に数分。
ようやく説教が終わり、彼女が彼に聞いた。
「で、これからどうするの?もう探し物は無いんでしょう?」
そういって何杯目かの飲み物を喉に流し込む。
「ええ、そうですねぇ。実はここの所、魂喰らいの情報が無くて、ここが最後だったんですよ。」
と、懐から古ぼけた本を取り出した。
「?何それ。」
「ああ、各地の伝承ですよ。そこ2000年程前の物で、ほら、大体ここの伝承に私達が使われる事が多くて。」
と、本を見せる。
2000年前の物なので何とか彼女にも読む事は出来た。
その本は保存状態も完璧で一文字も欠けてはいなかった。これ程のものを彼女は殆ど見た事が無かった。
それも宝の位置などを示す物では無く、伝承などを記した本は読んだ事など皆無である。
「すごい・・・・・こんなに完璧に2000年前の本が・・・・」
感動して目次を見る彼女。
「そこに載っている最後のがこの町です。」
と、その言葉につられタイトルを読むと・・・・・・
―――――『フェルマ・シゼルヴァ』―――――
「あれ?名前違わない?」
そう、目次に出ている名前とこの町の名前とが違っているのだ。
「ええ、まぁ、呼んで見ると色々と面白い事が判りますよ。もう私には必要ありませんから、差し上げましょうか?」
そう言われ、
「いいの!?・・・・じゃ、じゃあ、貰っとこうかな。」
と、興奮冷め止まぬが、他に話すべき本題があったのを思い出して彼女はひとまずそれをテーブルに置いた。
そして、深呼吸し自身を落ち着かせた後。
「で、どうする気?これから。」
本題に戻った。
「もう行く当て無いんでしょ?お金が有るとも思えないし。」
ちらりと、彼の服装を見る。
「はは、まぁ、そうなんですけどね。適当にまた旅でもしようかと。その内に運が良ければまた魂喰らいにも会えるかもしれ・・・・。」
「――――――ちょっ、待った。」
彼の言葉が終わるのを待たずに言う。
彼女としては彼が当てにするのを待ちたかったが、結果としてその気は無さそうだと判るとつい言葉が口を付いて出てしまった。
話を区切られ不思議そうな顔の彼を前に彼女はしどろもどろに話し始める。
「あ・・その・・・・あんた、古文書とか詳しそうだし、私の働いてる道具屋に雇ってくれるよう言ってあげても良いわよ。どうせ行く当てが無いんなら少し位寄り道しても良いんじゃない?この家、一人暮らしだから・・・・・・部屋、とか・・・・・空いてるし・・・・・・・」
提案。
どうしてこんな事を言ったのだろう?・・・・命の恩人だからかな?
理由は彼女本人にも判らなかった。
だが、彼女はなんとなく、もう少しだけ一緒に居たいと感じた。
この青年と、大昔、自分が父と慕った人物にどこと無く雰囲気が似ている、この青年と・・・・・・・
彼女はただ、自身の気持ちのままに行動しただけ。
彼にとっては断る理由も無い提案だった。
・・・・・・余談だが、彼女の後ろに居た小さなギャングが
「断って彼女を悲しませるとどうなるか判っているな。」
と言いたげな瞳で睨んで牙と爪を見せていたのは関係ないだろう。・・・・・・・多分。
・
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次の日から、この町の道具屋に店員が一人増える事となった。
彼は若い見た目にして珍しい白髪と豊富な知識、丁寧な接客からすぐにこの町に打ち解けた。
因みに、彼が道具屋として来た時から、この町の暴漢や不審者、犯罪者が警備隊の詰め所にぐるぐる巻きになって置かれている事が多発するようになる。
あの時フェリシアを襲った者達が、どうやらその最初の餌食となったようである。
ただ、誰がそんな正義の味方のようなマネをしているかは、町の人がどんな手を使って探っても、決して、判らなかったそうだ・・・・・・・・。
今日も深夜に白い髪が町を舞う。両手に最近多発した強盗事件の犯人を担いで―――――――――――
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