静寂が支配する。
最初に静寂を破ったのはフェリシアの方だった。
「・・・・な、なんなの。一体・・・・・」
そう言うのが彼女には精一杯だった。
「まぁ、詳しい話は貴方の家でしませんか?いつまでもそんな格好でここに居ると風邪を召してしまいますよ?」
と、彼女の方、詳しくは彼女の衣服を指差した。
瞬間、彼女の顔が全身に纏った赤に負けず劣らず染まっていく。
「なっっ!!ちょっ!バカッ!!見るなあ!!!!」
両手で一生懸命隠そうとするがその度に新たな箇所が破れていく。
「ふぅ、少し落ち着いて下さいな。・・・はい。」
いつの間に後ろに回ったのか、アツェムはフェリシアに自身のマントをかける。
「・・・・ありがと」
フェリシアがマントに包まり気恥ずかしそうにボソッと呟いた。
「さ、移動しましょうか。」
そうして、二人、夜の道を歩く。
フェリシアは一歩踏み出す度、自分の見知った場所を通り抜ける度、顔が暗く、泣きそうになっていた。
彼女が自身の家の戸を開けようとして、その手が止まった。
「あ、あのね」
「はい?」
「あんたと一緒に手当てした子・・・・・その、なんて言ったら良いのか、あいつに・・・・・・」
泣きそうな顔でフェリシアは彼女の見た事実を、あのあまりにも残酷な事象を告白しようとしたが、
アツェムはその告白が終わる前に彼女の手に自分の手を重ね一気にドアを開けた。
「あっ!ちょっ!!」
ザシュッ!!
「・・・・・ザシュッ?」
異音にフェリシアがアツェムを見ると―――――
「〜〜〜〜〜っっっっ!!!あ痛たたたたた。どうしたんですか、そんなに動いたら傷が開きますよ。あららっ!!ちょっと!痛いですって〜〜!!」
ドアを開けた瞬間飛び出した小動物に、自分がモノになってしまったのを確認した筈の生き物に、あのアツェムが、先刻までこの上ない強さを示した男が・・・・・・・・・見事にズタボロだった。
フェリシアは何がなんだか判らない。
はっと頭に浮かんだ言葉がそのまま口をついて出た。
「えっ!!ちょっ!!何でその子、生きて・・・・・」
その見事なまでの動揺っぷりにアツェムが襲われながらそれでも笑顔を崩さずに言った。
「あれ?ちゃんとフェルマさんと戦ってる最中に説明したじゃないですか。あの人が食べた筈の魂は全て勘違いだって。」
衝撃――――――。
彼女は・・・・そう、まるで10tトラックで吹き飛ばされたような衝撃を全身に感じた。
次に感じたのは、あの時全て粉々に打ち消されたはずの・・・・希望。
「じゃ、じゃぁ、まさか・・・・町の人も・・・・皆・・・」
「ええ、皆さん現在ぐっすりと御就寝中です。ああ、起こしたら駄目ですよ。皆さん今日一日一生懸命働いて―――――」
「いやったぁ!!!あっはははははははは!!!ねぇ!!あははははあはは!!!!」
歓喜。
言い終わる前にアツェムの言葉は彼女のこの上ない歓喜の叫びと抱擁にかき消された。
ちなみに今の叫びで周囲に住む住民から後日苦情が来るのだが・・・・・それは今この時はどうでも良い事だ。
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