白雪の町 〜誰が為に望みは叶う〜
「嘘・・・・」
そう言って彼女はその場に座り込んだ。
「願いはかなえた・・・」
その目の前で、黒い影が濁った、けれど確かな声で彼女に告げた。
「違う、こんなの、・・・・」
呆然と、そして、震える声で抗議する彼女に対し、黒い影は告げる事をやめない。
機械のように、ただ黒い影は言い続ける。
「願いはかなえた・・・・願いはかなえた・・・・願いは・・・・」
その声に、この事実を拒否したいと、考える事を停止した頭が無理矢理現実に引き戻される。
「・・・・・違う・・・・・・・違う!違う!!こんな・・・・こんなの、願ってなんかいなかった!!!」
彼女の目から涙が溢れる、彼女は泣いていた。泣きながら影に抗議した。その赤く染められた両手で耳を塞ぎながら・・・・・・
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その町の名はフェルマ・リデルカ。
この星の大昔の言葉で白き幸運、という意味だ。
大昔、この場所でとある聖女の願いを天が聞き入れ、そして、願いが叶った時季節は夏だというのに雪が降った・・・・と言う伝説から来ていた。
それから数百年、この場所は雪の降る時、訪れるものの願いが叶う場所として繁栄し、今ではちょっとした大都市の仲間入りを果たしている。
物語はここから始まる・・・・・・
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「はぁあああ〜、どうしよう・・・」
今ここで盛大なため息をついている彼女の名はフェリシア・アノン。
両親とは4年前に死別し、一人娘だった彼女は今は一人で暮らしていた。
普通の家に生まれ、普通の教育を受けた彼女は現在道具屋で働いている。
長く青い髪と、整った顔立ちから見栄えが良い、加えて明るい性格から道具屋の看板娘として働いてもう3年が過ぎていた。
そんな彼女の悩みは、
「本日3回目のお手紙だねぇ、フェリシアちゃん。で、どうなんだい?」
にこやかに道具屋の店主。背が高く穏やかな顔立ちで見た目は20代後半、といった感じの男性が店の奥から箒を持って入り口に向かいながら話しかけた。
手紙の内容はすでに把握しているようだ。無理もない。
彼女が看板娘になって以来、こういう事態は日常茶飯事となっていたからだ。
「はぁ、わかってて言ってますね?てんちょ〜。」
恨めしそうな目つきで彼女が店長を睨んだ。
「あはは、そんなことないさ。」
カウンターから発せられたその恨めしい視線をかわして彼は入り口を箒で掃きながら笑った。
「ノーですよノー。大体、何ですかこれ。資産や経歴の自慢ばっか!自分に惚れろ、とでも言いたいのかしら。こんなのご免です。」
そういってフェリシアは手紙をくしゃくしゃと丸めゴミ箱へ放った。
「あ〜あ、今回は結構有名な剣士さんからだろうに・・・」
中に戻ってきた店長が笑顔を崩さずに言った。
「どんなに偉かろうと嫌な物は嫌です。それに、私は・・・・」
と、彼女が話し終える前に、後に続く言葉は客によって遮られた。
「「いらっしゃいませ〜」」
満面の笑みと穏やかな二人の声が見事に重なった。
どんな状況でも即座に切り替えて客に対応できるのがプロ。
それがこの店の人間に求められるものだった。
そして、この客が来たことから始まり、店はいつもの賑わいへと移っていった。
彼女も店長もこの話題の事はもう頭の内から外へと流していた。
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