「ひゃーっはっは!! 楽しいねぇええ!!」
そう言って、黒き鎧を着た人物は剣を振るう。
白銀に輝く剣は、逃げ惑う人々に食い込み、肉を裂いていった。
「ぎゃあああ!!!」
「おとうさん!?」
そして、その凶刃はとある親子に向けられた。
「に、に……げ……」
「おとうさん!! おとうさん!!」
まだ幼い娘は父親に縋り付き、後ろで刃をかざす影が見えていない。
だが、父親には見えてしまっている。
あの凶刃が、自分を襲った刃が最愛の娘に振りかざされているのが、
「!?……や……め……ごぶっ」
叫ぼうとしても声が出ない。
父親は必死に叫ぼうとする。
逃げてくれ、と。
だが、その剣は無情にも娘の頭に食い込――
「貴様か、我が名語りしうつけ者は」
怒気をはらんだ口調と共に猛然と黒き刃が振るわれた。
「ぐぎぃぃぃぃいいい!?」
金属同士がぶつかり合ったとき特有の音が辺りに撒き散らされ、それに腰をぬかした娘が父親の横にへたり込む。
「……」
「ひっ!!」
無言で父親の方にマグナスは手をかざす。
すかさずマグナスの手から青い光が漏れ、父親に降りかかる。
「や、やめ、やめて……」
娘は父親に危害を加えていると思ったのだろう、必死に上半身だけでマグナスの足者にすがり付いてくる。
「――エイ、ミー」
そこへ、先程までろくに息すら出来なかった父親の声が投げかけられた。
「あ、え? お、とう、さん?」
改めて父親の方を振り返ると、そこには自分と同じように地に座っている父親が居た。
傷跡は既に無く、顔色にいたっては切りつけられる前よりも良くさえ見える。
「……傷は塞いでおいた、早々にこの場を離れよ」
目では正面を見据えながら、声だけで親子に言い聞かせる。
父親の方はそれを見て、
「あ、ありがとうございます!!」
一言そう言うと、娘を担いで全力でかけていった。
その途中娘も礼を叫んでいたが、マグナスの意識は前面の白銀の剣を持った黒騎士に向けられていた。
「癒しの法、成る程、なかなか高等な魔術が使えるみてぇじゃねぇかあ」
「なぜ、見逃した?」
「決まってるだろお? もっと良い獲物が見つかったからよお」
先刻、やろうと思えば黒騎士はマグナスを攻撃できた。
いや、絶好のチャンスといっても良いだろう。
だが、そうはしなかった。
「俺はなあ、糞虫の悲鳴は好きだが、強者面した奴を正面からいたぶった時の悲鳴はもっと好きなんでよぉ」
言うと、白銀の剣を構える黒騎士。
だがそれを見て、マグナスは笑った。
邪悪に、ただただ邪悪に、闇色な笑顔をその顔いっぱいに浮かべた。
「そうか、我もそういうのは、嫌いじゃない」
にたり、と笑うその顔に、黒騎士は言い様のの無い恐怖を覚えて、しかしすぐに気を取り直して言った。
「お前、運がわりいなあ。俺は最強の魔王だぜぇえ」
そう言うと、舌を出して下品に笑う。
マグナスはそれを見て一言。
「ほう、ではお前が、魔王グランだと? そう言うのか?」
それは相手を極限まで莫迦にしたような口調であった。
それに対し、黒騎士は怒りをあらわにしてわめき散らす。
「そうさ、俺が魔王グラン様さ! さあ! 俺を崇めろ!! 奉れ!!」
だが、次にマグナスが口を開くと、男の体に緊張が走った。
「お主、人間だな。鎧を纏っているから気付かれないとでも思ったか? 大方人間だとばれない様にする為に比較的肌の露出の無いグランを選んだ、と言う所か」
その言葉に、男は明らかに動揺していた。
しかし、
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