「ひ、ひぃぃぃ〜!!」
「お、おたすけぇぇぇ〜〜!!」
 数人の男達が全身傷だらけになりながらとある町の入り口を抜け、野を駆けていた。
 だが、既に体力も尽きかけているのかその速度は子供にも劣っている。
 そんな男達をゆっくりとした歩調で追うもう一人の青年。
 片手に大剣を持ち、全身に鎧を着込んだ姿から察するに剣士なのだろうが、その漆黒の鎧と、同じく漆黒の大剣を持つ姿は、剣士と言うには少々邪悪な雰囲気をかもし出している。
「ひぃ!?」
 敗走を続ける男の一人が躓き、転ぶ。
 振り返った先には、
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
 既に青年が目前に迫っていた。
「た、助、助け……」
 言葉にならない命乞いを続ける男に対し、青年が笑った。
 鋭い八重歯をむき出し、笑うさまは、邪悪と呼ぶにふさわしい。
「ふっ、小物が、消え失せるがいい!!」
 言って、青年は剣を振った。
 縦ではなく、横に……
 ごいん!!
「ひぎゃああああああ!!」
 剣の腹で思いっきり男が吹っ飛ばされた。そして――
 どささささ!!!
「あぎゃああ!!」
「うぐぇええ!!」
「のぐわっ!!」
 千差万別な悲鳴を上げつつ、飛んできた男とそれにつぶされた男達の悲鳴が木霊する。
 それを耳にしながら、青年は満足そうに頷くと、男達に向かって叫ぶ。
「これに懲りたなら、もう下らない真似はせぬことだ!! 次は命が無いと知るがよい、この塵共!!」
 既に聞こえているかどうかも怪しいが、青年は満足そうに来た道を戻り、町の方へと帰っていった……。


「ありがとうございます」
「ありがとうございました、マグナス様」
「うむ、気にするな」
 今、町の広場で複数の町人から礼を言われているのは、つい先ほど男たちを完膚なきまでに打ちのめした青年だった。
 彼こそ、マグナス・ケルブロウィス。
 あのときの赤ん坊である。
「これで安心して隣町まで行けます」
「もう金を巻き上げられる心配もない」
「いやぁ、本当にありがとうございました」
 あの男達はどうやらこの町で恐喝まがいのことをしては商人や旅人から金を巻き上げていたらしい。
 町人達の反応からするに、あの男達が悪人なのは明白だった。
「気にするな、あのような小物を見ていると虫唾が走るのだ。ったく、やるならもっとでかい事をしろと言うのだ」
「は?」
 一瞬、町人達があっけに取られたような顔をした。
「大体昔から流通が盛んなこの町は盗賊やら山賊やら、我がどれだけ貢物を減らされたか」
「??」
 町人達が話しについていけず困惑した表情で互いに顔を見合わせた。
 マグナスもそれに気づき慌てて、
「いや、ああ、なんでもない。とにかく、これでもう困った事はないだろ?」
 と、話を逸らした。
「え、ああ、はい、ありがとうございました」
 それにつられ、町人達も礼を述べる事を再開する。

 

 

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