――――三年後
とある荒れ果てた町、英雄、善人がいなくなって久しいこの町で、今日も弱者は強者の糧となっていた。
「ひ、ひいい!!」
「そ、それをとられたらどうやって生きていけば!」
 旅人然とした男二人が必死に抵抗するも、相手は容赦しなかった。
「うるせえんだよ!!」
「あうっ!!」
 鈍い音が響く。
 男の足が旅人の一人の腹に食い込んでいた。
「だいたい、手前らがこうしていられんのは俺様たちのおかげだぞ、ああ? わかってんのかよこらぁ!!」
 更に音は連続し、蹴られている男が苦悶の表情を表す。
「ちっ!! ムカつく事しやがって、お前ら、殺るぞ」
 元々機嫌が悪かったのか、男がそう言うと旅人の周りを逃げられないよう囲っていた男達が刀剣類を取り出した。
「ひひぃぃぃ!!」
「はは、死――」
 一閃。
「は?」
 硬い金属音と共に、男達の武器が次々に崩壊していく。
 思わぬ事態に旅人二人も呆けた様子でそれを見ていた。
 すると、
「感心せんのう、そういう事がまだ行われていたとは」
 金を巻き上げていた男達の後ろに、漆黒の鎧を着た騎士が立っていた。
「あん、文句あんのかよ!?」
「あるから言っておるのだ、莫迦もん」
「なっ!!」
 この男に今までこんな罵声を言う人間はいなかったのだろう。
 見る見るうちに男の顔が赤く染まり、
「て、てめえ!! おい、こいつもついでに――」
 と仲間を振り返り、男は唖然とする。
 数では十分勝っているはずの男達の仲間のほうが、顔を青ざめさせ、ある者は失禁さえしていたのだ。
「な、お、おい!! どうしたんだよ!!」
 あまりの異常さに男が問うと、
「お、おまえ、気付かねぇのかよ!!」
「あ? な、なにがだよ。」
「ばっかやろう!! あの格好見たらわかんだろ!! ほら、西のレブラット王国の噂!! 聴いてねえのか!!」
「ああ? なんでも殺し屋ギルドが黒い勇者に三日で壊滅……」
 さあ―っと、まるで図ったかのように男の顔から血の気が引いた。
「ま、ままま、まままさか」
「ふっ、一応噂くらいは知っておるか。運が悪かったの、クズ共」
漆黒の鎧を纏い、勇者の証をその胸に掲げた騎士は男達に向かって漆黒の大剣を構えると、高々と吼えた。

 

「我こそは、レブラット王国国王にして

 勇者マグナス・ケルブロウィスなり!!!!」

 

 

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