「ぱちっ」と言う擬音がぴったり来るように彼の目が開いた。
彼は自分がどこに居るのか理解できず、辺りを見回し、数秒して昨日の記憶を呼び戻した。
「・・・・怪我が治るまで、居る事にしたンだったっけか。」
ゆっくり起き上がる。
部屋にはあの少女の影も、自分をこんな目にあわせたあの異形の姿も無かった。
「・・・何年ぶりだろな、あのときノ夢見んの。」
言って、彼は腰のお守りに手を当てる。
黒く鋭い水晶に紐を通しただけのそれは、何か見ている者に神秘的な何かを感じさせた。
「やっぱ、俺達みたいに旅して生活してる人だっタのかな?」
水晶をじっと見て、彼はそう呟く。
あの時、彼を救った主は彼に襲い掛かることなく消えてしまった。
彼もあまりの出来事に気を失ってしまい、気が付いた頃には見つけてくれた仲間に抱きかかえられていた。
どうやって砂海虫を倒したのか、何故気を失っていたのかなど、色々聞かれた。
彼は紅い眼の人が助けてくれたと言ったが、結局は信じてもらえなかった。
最終的に、砂海虫は何か毒になるものを食べ、そのせいで暴れ、この集落に来て、彼を食べる寸前で力尽きた、と言う結論を大人たちは導き出した。
その時、彼は自分を助けてくれた人がいた事を証明しようとし、その人が立っていた場所を色々探した結果、見つけたのがこの黒水晶である。
それ以来お守りとして、また、その人を探す手がかりとして彼は常にこれを持ち歩いていた。
「あの人は絶対存在したンだ。今度会えたら礼言わねぇとな。」
感慨深く水晶を眺めていると、不意に扉がノックされた。
扉に使われている木材が乾いた音を立てる。
「・・・・・なンの用だよ?」
あからさまに不機嫌な声で彼が反応すると、
「あ、・・・え、と・・・た、食べ物を・・・・」
扉の向こうからいかにも気の弱そうな声で返事が返ってきた。
どうやらここに居てくれと自分に懇願した少女に間違いないようだ。
「・・・・入れよ。」
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