「う、うわぁぁぁぁ!!!」
少年が間近に迫る虫に恐怖のまま叫ぶ。
その声はもはや人間が発しているとは思えないような音だった。
が、その声が途絶える事は無かった。
「あああああぁぁぁ・・・・・??」
あれだけ間近に迫って来ていた筈の口が、いつまでたっても彼を飲み込む気配を見せず、彼の前で停止していたからだ。
「??」
訳が判らず少年は叫ぶ事も止め間の抜けた顔をしていると、虫の巨体が動いた。
少年は「ひっ」と短い悲鳴を上げたが、虫は少年を襲う気配を見せなかった。
なぜなら虫の巨体は動いたのではない、ぐらついたのだ。
そして、辺りに轟音と大量の砂埃を巻き上げ巨体が砂に沈んだ。
少年はあっけに取られ虫を見ていた。
すると、彼の目にさっきまで無かった筈のものが映りこんだ。
人影だ。
その影は確かに人の形をしていた。
夜なのもあってどんな姿かはわからないが、一つ確かな事は、彼が決して普通の人間ではないということ。
彼の姿は確かに人間、だが、ただの人間に砂海虫を倒せるだろうか?
ただの人間が、こんな、全てを殺してしまいかねない雰囲気を持っているだろうか?
ただの人間が、人間であるはずの者が、
こんな眼をしているだろうか?
その目は紅かった、夜中に他人の目の色など見える筈が無いにも関わらず、それははっきりと存在を誇示していた。
人間じゃない。
少年はとっさにそう判断した。
だが、逃げられない。逃げられるはずが無い。
相手はさっき自分が散々逃げていた砂海虫よりはるかに強いのだ。
おびえの色を強くして、少年は目の前の人影に眼をやる。
少年にはその眼が一段と光った気がした。
少年の方を向いて―――――
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