「だいじょうぶ?やっぱりおぼれたショックで混乱してるんだね。ほら、これでも食べて落ち着きなよ。」
目の前に質素だが良い香りをさせた品が並ぶ。
毒・・・?いや、サーチした結果ただの食物のようだ・・・・・油断は出来んが・・・・・頂こう。
「すまない・・・・頂く。」
「ん。ゆっくり食べなよ。」
笑いかけて彼女も自分の分を食べ始めた。
・・・・・補給は必要だ。
言い訳である。実は生態兵器といっても人間と殆ど大差ないのである。栄養摂取もすれば排泄もする。
結局は人工授精させた人間に機械がところどころ埋め込んであるだけなのだから。
食事が済むと彼は質問を受ける事になった。
「そういや名前は?」
「認識番号2300684、コードネームはヴォルト」
「??なんか良くわかんないな・・じゃぁ、ヴォルトね。で、ヴォルトさんはどこからきたの?」
「日本国所属第453生態兵器工場だ」
「は・・・???どこそれ?そういや服も見た事ないね」
お前の方が異常だ、と心の中で毒づいた。意外と性格悪いかもしれないヴォルトだった。
全く話が通じていない、そんな事が続き、彼女は結局名前しか得る事は出来なかった。
「外に出たいんだが、いいか?」
「え?ええ、いいわよ」
彼の話した内容を考えていたら彼が急に話しかけた。
彼女は例の愚痴おば――訂正、お栄さんに彼のことを話すことにした。
ヴォルトは早くまともな人間にあって任務先に行きたいと思っていた。
そして、二人が家を出る・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
絶句。
彼女に連れられてみた外は・・・・・・完璧な・・・・・・・・・江戸時代だった。
町並みも、通る人も、建物も、全てが彼が検索した時写った数千年前の映像と酷似していた。
馬鹿な!?馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なバガヴュッ!?
最後に舌噛んだ。
心に思っている言葉なのに噛むわけ無いって?
噛んだものは噛んだんだ!!ごちゃごちゃう言うな撃ち殺すぞ!!
キレた。サイボーグとは思えぬ理不尽さである。
そ、そんな馬鹿な・・・・・ではここは・・・・・・まさか・・・・・・う、うそだ。嘘だぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!
心の中では彼は大絶叫だ。凄まじいまでの絶叫だ。
もっとも、傍目ではただ呆然としているだけだったが。
その様子はちょっとイっちゃった人みたいで不気味だった。
「・・・・どうしたの?」
そこに冴が話しかける。
はっと我に返ると(いやほんとはぜんぜん混乱してるんだけど)彼はとりあえず彼女についていく事にした。
それ以外方法は無いのだから。
衛星反応は無し、・・・・周囲検索・・・・機械的反応・・無し・・・・武器反応・・・・・刃物及び単純な銃器・・・・・・
彼女についていく途中に色々と探ってみたがやはりここが大昔だという事に変化はないようだった。
・・・・・昔のドラマかなんかか?
と、余計なものまで検索した彼は思った。
彼の頭には膨大なメモリが搭載されている、そこで検索をかければほぼ全ての情報がわかるのである。
まさにサイボーグ!!便利だねぇ。
そうこうしている内に着いた先は宿だった。何処からどう見ても江戸時代よくある宿だった。サーチしても金属反応は皆無、ほぼ全て木でできているようだった。
もういい、ここは江戸時代でいい、はん!どうにでもなれってんだこんちくしょう!!!!
少女に続く彼の眼から涙が出た。だが、一瞬の事なので誰も気付かなかったようだ。
「こんにちわぁ〜」
「あらぁ、お冴ちゃん。いらっしゃい。」
やさしく迎えてくれたのは絹という女。この宿の看板娘で眉目秀麗、冴の憧れの人である。
「あ、お絹さん。」
「あらあら?そちらの人は?変わった服ねぇ・・・・・」
と、冴は事情を説明した。
「あらあらあら、そうなの、大変ねぇ。ああ、私は絹といいます。ここで働いてます。」
「ヴォルトだ。」
「あのぅ、お絹さんそういうわけで、」
「はいはい、女将さんね。」
と絹は店の奥に向かって女将を呼んだ。
女将は返事と共に彼女達を奥の部屋へと来るよう言った。
「へぇ〜大変だったねぇ、アンタ。」
「ああ」
「で、女将さん、この人の言う事判ります?」
おいおい、俺を異常者扱いするなよ、俺から見たらここのほうがよっぽどおかしいんだ。ったく、なんなんだ江戸と言うのは!!
心の中で愚痴るが表情には出さない。人間我慢が大切だ。
ん?俺はサイボーグで人間じゃないって?黙れ愚民!!張っ倒すぞ!!
またも勝手に心の中で問答をする。
彼は本当にサイボーグなのだろうか?
まるでカルシウム不足+少しイってる若者を見ているようだ。
そんな彼を無視して話は進んでいく。
「さぁ?私にもわかんないねぇ。で、どうすんだいこの人?」
「見た所お金も無いようですし、しばらくうちに居てもらおうかと」
「ええっ?いいのかい?」
「はい、ちょうど男手が欲しかった所ですし、悪い人じゃなさそうですし、おとうさんやおかあさんも困った時はお互い様って言ってたし」
「ふーん。ま、何かあったらすぐあたしに言うんだよ!」
「はい!有難うございます。」
「なにいってんだい、水臭いこと言わないの!」
ここに人情深い女将とその人情に目を輝かす少女との絆が確立された。
そこに残念ながら彼の入る余地は無かった。
お、俺のことを話しているはずなのに俺が入れない・・・・・・・・理不尽だ。
またも彼の目に涙が出るが気付かれないよう払った。
「きゃーー!!」
いきなり悲鳴が響く。
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