病院の屋上で、一人の青年がどこから持ち出してきたのか、小さめのカンを燃やしていた。
いや、正確にはその中にある物を燃やしていた。
「ああ、こんな所にいた。なにやってるの?」
そこへ長い髪を結った、おっとりとした感じの女性がやってくる。
和服を着せればかなり見栄えしそうな、和風を絵に描いたような女性だ。
「ん? ああ、ちょっとね。」
振り返り、微笑を浮かべながら青年は言った。
「ちょっとって、お医者さんの検査をほっておいてまでする事なのかな〜?」
いたずらっぽい口調で彼女が言う。
「はは、まあね。そうだな、強いて言うなら、記念、かな」
「?? 記念って何の? 回復記念?」
「そうだな、なんて言ったら良いか。人って不思議だって言う記念かな?」
「あはは、なにそれ?」
「別に、ただ、人って立つ所が違うだけで随分変わるんだなってね」
「それって前に言ってた事?」
「まあね、俺は実際、随分変わったと思うよ」
そう言って、青年は彼女のほうに歩いていった。
そして、
「な、なによお、急に」
いきなり抱きつく。
「うん? いや、楽しいなーって」
「もう、子供じゃないんだから」
「そう言っても、止めさせようとしないのは何でかな〜?」
「バカ」
「はは、ごめん。さて、お医者様も待ってるだろうし、病室に戻りますか」
「全くもう、これがついこの間まで生死の淵を彷徨ってた怪我人かしら」
呆れながら、彼女も青年に付いて行く。
何かを燃やしているカンをそのままに。
不意に、カンから紙切れが風で舞い上がる。
それは自らに刻んである文字を存在を誇示するかのように、自身は鳥とでも言うかのように、高く、高く舞って行った。
所々焦げているにもかかわらず、紙切れ自身が意図したかのように、文字の部分には焦げ目一つ無い。
〜〜〜〜人は生きてる。生きているから変化する。
全ての人がこの世を楽しむ事が出来る。
それは本当に些細な事で、でも、とても大きな事。
この世界に、人に、全てに祝福を〜〜〜〜
|
|||
|
|