八月二十六日
分からない。
本当に?
どうして?
今日何故彼女に俺の看病をするのか聞いた。
分からないかと聴かれたので分からないと答えたら鈍いと頭を叩かれた。
女性に告白されたのは、自分でも久々に心臓の高鳴りを感じたのは、久々だった。
八月二十七日
不思議だ。
最近退屈じゃあなくなった。
自分でも信じられない。
彼女に告白されたからだろうか?
いや、今まで付き合ったことなんて何度もあったが特に価値観や物の見方が変わるなんて事はなかった。
死にかけたからだろうか?
たかが銃弾、突き詰めれば鉛を体に入れただけで考え方が変わるものなのか?
生きていて良かったとも、生きていたいとも考えていなかった俺が?
じゃあ、なぜ?
八月二十八日
昨日からの疑問を、病室で彼女にぶつけてみた。
最近、俺の中で物の価値観が変わった。前どうでも良いと思った事が大切に思えるようになった。何が変わったんだろう? 、と
彼女は、少し考えるようなそぶりを見せて、俺にこう言った。
立ってる位置じゃない?
たった一言だったが、その言葉は妙に響いた――
八月二十九日
今日でこの日記は最後だ。
もう書く必要も無いものだから。
元々は鬱憤晴らしのためのものだ。
最早俺にそんなものは無い。
正直、今でも俺には良く分からない事がある。
いったいどこで俺の立ち位置は変わったのだろう?
彼女に会った時?
ナイフを買った特?
襲撃犯に立ち向かった時?
いや、それともこの日記を書き始めたときから俺の視点は変わって行っていたのか?
只一ついえる事は、見方を変えれば、この世界はとても魅力的だという事だった。
どうでも良かったものがひどく愛しい。
俺にとってこの世界はもう牢獄ではなくなった。
この変化を強いて言うならば、俺の世界は、視点は、反転したのだろう。
何でも無い事、どうでもいい事でも、積み重ねる事で大きな変化を生むのではないだろうか?
そう、人は生きている、常に変化を続ける生き物なのだから――――
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