親の会のつくり方と進め方
               〜「星の会」のささやかな経験を通して〜

星の会   一番星 光

このレポートに出てくる名前は、すべて仮名です。

(1)はじめに

 佐伯に星の会が生まれて、7年になります。月に1回の例会を続けて、8月例会で81回目になりました。星の会は、教師3人と父母2人の5人でつくりました。「不登校の我が子について話したい。」という気持ちが、5人をひき合わせてくれました。
 最初の頃は、ハンカチなくして語れない体験も、回を重ねるごとに自然に明るく語るようになっていきました。これまで、多くの不登校の体験をうかがいながら、いっしょに笑ったり、涙をこぼしたり、落ち込んだり、励ましあったりしてきましたが、今回はそのささやかな経験から感じたことを皆さんに伝えていこうと思います。それは、今、大分県下にたくさんの「親の会」ができているのですが、私達の経験がそうした親の会に生きてくると思ったからです。批判的に読みつつも、今の親の会を見つめていく一つの視点にしていただければ幸いです。

(2)例会   体験談の交流の場にアドバイスはいらない

 親の会では、例会をします。その例会は親の会の要となるものです。星の会の例会は「体験談に始まって体験談に終わる」ように意識しています。(なかなかうまくいきませんが…)
体験談と子どもの状況の報告は違います。同じようで、ちょっと…いやかなり違います。
ある会員が、体験を話していると、疑問や「どうしたらいいの?」というメッセージを送ってきます。そのほとんどが、語っている自分自身への問いかけなので、自分で答を見つけるほかありません。聞いて見守ることで「OK」ということが多いようです。しかし、どうしても他の人の考えが聞きたいという場合もあります。
山田さんという方が、「娘の心がわからない」と言っていましたが、一番星がいろいろ言えば言うほど混乱していたようです。例会の時は、「そうですね」と納得しても、家に帰って娘と向き合うとどこか違うのです。よく言われる「頭ではわかっても、心がついていかない」という状態です。
そんな時、島さんという方の話はとてもよかったようです。山田さんも、「島さんの話を聞くと、よくわかる」と言っていました。一番星の話と島さんの話の違いはどこにあるのでしょうか?
 一番星の話は「答え」やアドバイスをしていました。自分の体験を話しても、なんとか山田さんにわかってもらおうという押し付けがありました。世話人をしている一番星は何とか山田さんに元気を取り戻してもらおうという気持ちからアドバイスをしていました。それは「星の会を最初からやってきている」古いメンバーが新しいメンバーに説教をしている感じなのでしょう。
それに対して、島さんは、「私の場合は、こうしたら、こうなったよ」という体験談です。体験から学んだ知恵を語っています。そして、島さん自身も体験を語りながら、自分を見つめなおしています。  
皆さんの例会はどうですか?

(3)例会  体験談とは何か

 体験談とは、「仲間にわかってほしい」と語りかけるものでしょう。
ですから、例会では、子どもの状況報告だけで終わらせるのではなくて、そのむこうにある気持ちを語っていただきます。といっても、メンバー一人ひとりは、例会のために話をするのではないですから、世話役の人が話を聞きながらその気持ちを引き出すことが大切だと思われます。
「今話があったように、子どもが朝なかなか起きてこない時って、とても不安になりますよね。○○さん、同じような気持ちになったことありますか?」「『学校に行きたくない』って子どもが言った時、びっくりされたでしょう。」「そんなふうに子どもと話をすることができたら、うれしいよね。」「不登校ということを受け入れることって、そんなに簡単にできないですよね。どうです○○さん」というふうに、メンバーの気持ちをみんなに広げていくことが大切だと思います。そして、気持ちを共有することが大切だと思います。
なお、体験談は主観的なものなので、過去の事実を見る目がその人の成長と変化によって変わるので、体験談も変わってきます。
それから、何よりも大切にしなくてはならないことは、体験談を批判しないということです。体験を批判すると、その人自身も批判することに結びつきます。一番星は、例会で体験談を「それはよくないと思います。なぜかと言うと、こうこうだからです。…」としたことがあります。その時は、一番星はそのメンバーに対して、同等でなく「上」から見ているようでした。例会では、会員相互は同等の立場でないとまずいのに…。

批判のない体験談の交流は、話す側だけでなく聞く側にも大きな意味をもちます。心の耳をすませて聞くと、自分の心がゆれます。「たいへんだろうな」「つらいだろうな」「私といっしょだ」と心に伝わります。そして、自分をふりかえるきっかけとなります。初心にかえり、自分を新しくします。生の体験談に、あの頃の自分を見つけ、客観的に見つめることができます。
そうしたことを通して、自分の問題もひきうけながら、生きていくことができるようになると思うのですが…。


(4)例会   例会の危険性

 例会の時に、相談を受けた側が、相談してきたメンバーの問題を、自分の体験と同じだと思いこみ、問題を取り込んでしまう危険性もあるので注意しなくてはなりません。例えば、学校に対する批判などもそうです。
自分が学校からひどく傷つけられた体験をもっていると、学校への不満を聞いたりすると、「この人も、きっとそうだ」と思いこみ、「学校なんかあてにしないほうがいい」と意見を押し付けることがあります。また、子どもの気持ちなども「自分の子どもがそうだったから、あなたの子どもの気持ちもきっとそうだと思う。」というふうにその人の悩みを、聞く側が決定づけてしまう危険性があります。
話す側としては、聞いてもらうだけで納得という場合もあるので、相談を受ける側は、体験談を聞いた答えは、自分の体験談で返すことを大切にしたほうがいいと思います。自分の体験を一般化して、「私の場合がこうだったから、あなたの場合も、きっとそうだと思う。」という論調を時折目にすることがありますが、それは世話役の人が上手にまとめなくてはなりません。
私の経験から、そうした展開になる時は、聞く側が話す側の言う事を少ししか聞かずに、「ああ、それはね…」というふうに自分の問題にすりかえてしまっていることが多いです。
 相談の主人公は、相談者です。どうするかという決定は本人が下します。相談を受ける側が下すのではありません。「強制」「説得」はもちろん、「納得させようとする」ことも好ましくないと思います。つらい思いをして、迷っている仲間の姿を見るのは、同じ会のメンバーとしてもつらいです。「自分と同じ苦しみをさせたくない」と思い、じれったくなって、相手の思いをつかむ前から、自分の問題を語りすぎてしまう危険性が例会にはあると思います。(一番星は特にあります)

(5)親の会の係

 親の会ができた時は、盛り上がっていたのだけれど、半年くらい立つうちに「盛り下がって」いくことがあります。そして、いつのまにか例会ができなくなってしまった…。
親の会がきちんと開かれていくためには、いくつかの係が必要です。星の会の場合は次のような係があります。

星の会ができた時は、一番星が、そのほとんどの仕事を引き受けていました。しかし、そうしたことは、一番星のためにも星の会のメンバーのためにもよくありません。一番星が忙しくなると、星の会の活動が停滞するし困ってしまう。しかし、他の人は「一番星さんにしてもらっているから…」と遠慮して言わない。そうすると、お互いの不利益となります。

会計

会費を集めてチェックする

会報

会報を作る

郵送

会報を郵送する

会場

会場の予約をする

連絡

連絡網を回す


 今では、一番星は会報係だけを担当しています。その会報も、書いて印刷するだけです。その後の郵送は、他の人がしてくれます。
 係の担当は、その人の特技・条件や、やりたいことを生かして担当してもらうのがベストだと思います。

 会の代表を決めることについては、例会をしているだけ(親の会内部の活動)であれば、その必要はありません。しかし、外部との接触を持つ時には、やはり組織として見られるので必要となります。 

(6)連絡網

 連絡網は、いろいろためしてみましたが、次の形が一番いいようです。

 この方法だと、一人が連絡する人は2〜3人ですみます。そして確実です。連絡をすることで、その会の所属意識も高まっていくので、本人の納得を通して連絡網を作りましょう。
 それに、この方法だと、会員の名簿をAさん(もしくは、ABCの三人)だけが持っていればいいことになります。会員の中には、名簿が出まわることを嫌う人もいるので、こうした方法が良いでしょう。
  連絡網については「例会の日時は、毎月決まっているから、わざわざ連絡をしなくても…」という話を聞くことがありますが、そんなことはありません。例会の前に連絡網を回し、例会のことを直接伝えることは、例会の参加者を増やす上で有効です。「来る者は拒まず、去る者は追わず」と、電話連絡をしない考え方もありますが、会員は別に去っているわけではありません。忙しくて、例会の日時を忘れているかもしれないのです。電話連絡をすれば、「会を去るのかどうか」もはっきりしますから、きちんとした方がいいと思います。

(7)専門職や教師との関わり

 親の会と専門職(精神科医・カウンセラー・教師等)の関係はどういうものでしょうか?
 星の会にも専門職の方がいますが、主導権は親の会の方があります。親の会が、専門職の方の知識や考え方を活用させていただきます。
 確かに専門職の方の話には、親の会にはない視点があります。しかし、自分の心と体で経験した親の方の話には、問題をより深く理解している部分があります。専門職の方々は、書物で得た知識を、親の体験談を重ねながらより豊かに理解していくことができると思います。
 親の会の中には、教師が参加している会があると思いますが、教師も他の会員と同じ立場であることは大切です。教師であっても、不登校のことについては親と同等(?)の認識だと思いますから、コメンテーターの立場ではなくて、他の会員と同じ位置にいてほしいものです。
 親の方も、教師を特別な位置におかないように気をつけなくてはなりません。例えば、教師を「○○先生」と呼ぶのはまちがいだと思います。子どもにとっては「先生」であっても、親の会ではその親にとって先生ではないのですから、「○○さん」と呼ぶようにした方が良いのではないでしょうか。
 学校の中に親の会を作っていることを聞くことがあります。校長先生や生徒指導の先生や担任…と保護者で行っている親の会などでも、やはり対等でないといい親の会とは言えないと思います? 学校側が、提言や意見などを言うのは、なるべくひかえて親の気持ちを受けとめていただきたいと思いますが、現実的にはむずかしい状況のようです。


        


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