STGE 峠 Kuragari Pass

距離 短
交通 良
勾配 壁
再走 厭

前回の百井峠以来の長距離サイクリング、(本当は瀬田にも行ってるのだが)、しかも今度からはMTB(マウンテンバイク)での走行となる。さて、今回の目的地は・・・奈良。

奈良へのアタックは以前に京都奈良間の往復として決行したことがある。片道35kmほどの行程はママチャリでしかもサイクリング初心者の儂にはかなりの負担であった。
が、その後、雪の途中越、秋の百井峠を経てついに今回は大阪屈指の難所へと挑むのであった。

・高槻→(170号線)→枚方→(168号線)→生駒→(163号線)→木津 34kmぐらい

京都在住の今回のサイクリングの(いつもだが)パートナーMとはJR木津駅にて10時集合。地図を流し読みし、大体30kmと踏んだ儂は1時間ちょいあれば余裕で着くだろうと予測し、余裕を見計らって8時半に家を出た。枚方まではトップギアで快適走行、枚方よりいつもの職場の前を通り過ぎて天野川に出た。そこから1号線を横切り168号線に入る。天野川沿いは有名なミスルート多発地帯、茄子作付近での橋を渡った直後の右折であったり、連合橋(?)あたりの右折直ぐ左であったり、難所を越えて磐船越えに。頂上付近までは楽々に速いギヤを入れていたが、それより先はバテた為に軽いギヤに変えた為に大幅にペースダウンしてしまう事に。生駒に着いたときには9時半を回っておりピンチ。急いで163号線に入り長い下り坂を軽やかに飛ばした。結局10分遅れで木津駅に到着したが、さらに油断していたMは30分遅れて到着した。

・木津→(24号線、自転車道、県道44号線)→奈良→(369号線、県道1号線、308号線、県道9号線)→大和郡山 20kmぐらい


奈良公園で鹿煎餅を購入するもウケず・・・

以前に京都から奈良に向かった時と同じルート。平城山駅付近から自転車道で山を越えてドリームランドの裏手に出てくる。そこから山を下り奈良公園へ。恒例の鹿煎餅を購入し、友人Yの待つ大和郡山へ。県道9号線は、狭い、(車が)多い、(走り)辛いの3拍子の揃った奈良道を象徴しているかの様な道であった。平城京跡であるその場所の地名には四条や七条などといった京都で馴染み深い名前が多い。ある意味天平の香りを残すたたずまいではあるが、その雰囲気は京都のような雅といったそれとは違っていた。都という面影は無くそれはただの田舎道でしかない。

近鉄郡山駅にてYと待ち合わせ、Y氏のバイクに着いて金魚池と田圃のど真ん中をひたすら走ること20分、Y氏の自宅でくつろいだ後彼の車で小一時間ほどドライブに出かけた。松尾寺へ向かう急坂はこれからの道中の険しさを予知するような物であった。

・大和郡山→(県道7号線、酷道308号)→南生駒 20kmぐらい

Yと別れた後、富雄川を北上し、第二阪奈道路中町IC付近より恐怖の酷道308に突入した。まず、行き先の表示が存在しないのには閉口である。県道側からの表示では右折の奈良側は小さな字でかろうじて表示されている、しかし左側大阪方面の表示はあるどころか、矢印すら存在しない有様である。事の異様さを正に物語っている。308奈良方面から大阪方面の交差点の標識はさらに酷い。矢印は存在する、しかしきわめて小さな矢印しかない。そして行き先は何も表示されていないのだ。国土交通省はこう述べているに等しい。

308を使うな。

彼らお役所の人間にとって、国道308号線とは、第二阪奈の事なのであり、決して一般国道308号線の事ではないのである。

308に入った。道は狭いどころの騒ぎではない。車が入るのは明らかに場違いなその狭さは四国が誇る日本3大酷道439号線を彷彿させ、その強烈なまでの勾配の坂は近畿北部随一の酷道477号線前ヶ畑峠の東側18%勾配に匹敵する。そんな坂をMTBで登れというのだから酷である。どれだけギアを軽くしても足の負荷は軽くなった気にならない。いや、確かに軽くなっている。しかし軽くなっても登るに十分な体力を得ることが出来ないのだ。あれは正にと呼ぶにふさわしい。さらに酷いのは壁が数kmに亘って持続している事である。狭苦しい道の両脇途中にはフェンスが敷かれてあった。不法投棄防止である。

忘れ去られた道にやってくるのは忘れ去られた産業廃棄物しか無い。

あまりにも酷い。この酷道以上に酷いのが産業廃棄物である。外には春を囀る鶯が飛び回り、初夏の訪れを感じさせる燕も見られる。しかし、この森は死んでいる。

「こどもの森」という憩いの施設がありそこへ向かい休憩する。一気に峠を登り切るにはあまりにも険しすぎた。あの恐ろしいまでの産廃のあとにあったのは文明の憩いの場として作られた人工の自然である。(人工とはいえ、古代の人工の自然(畑)とは違い、近代の人工の自然である。)そのいこいの森の周りには先ほどまで唸るように道に横たわっていた産廃の影は微塵も感じなかったのは皮肉であろうか。

「こどもの森」を越えてからも峠は続く、むしろこちらの坂の方が厳しく感じた。一緒に走っているMも苦しんでいるものの儂よりも軽やかに走り儂は遅れを取ることになった。途中所々で休憩を取らないと前に進めない。それでも道はさらに登るから恐ろしい。

そうしてやっとの事で峠を越え南生駒に到着するが、308のトレースは他の国道のそれとはケタはずれに難しい。308は古街道だ。滅多な事でルートが曲がる事はない。直進在るのみ。これを徹底したルートである。たとえそこが軒の裏であろうが工事現場であろうが住宅道路であろうが。Mもとまどいを隠せない程の道の変貌である。信念を持ってルートを示す儂でも完全な自信を持つことができない。

やっとの事で南生駒に着いた一行は、最後の難所、暗(くらがり)峠を越えるべく休息を取るのであった。

・南生駒→(308号線)→暗峠→(308号線)→東大阪 5kmぐらい

まず驚くべきは生駒山脈というとてつもない山並みを越えるのにたった5kmしかないという点である。

国道308号線は古くは奈良街道として大阪と奈良を結ぶ重要な道路であった。古代、人力のみが交通を支配した時、大阪から奈良へ向かうルートは2つしかなかった。一つは柏原から王寺へと抜ける大和川ルート、現在の国道25号線である。厳密には生駒の山を避けて奈良へと向かうルートである。そしてもう一つのコースこそが、敢えて山を避けずに直線で繋げた最短コース、暗峠越である。最短コースであるが故に険しさは尋常ではない。しかし、わずか1日で奈良までたどり着けるこのコースは人々に親しまれた。特に山上の峠の集落、暗峠は尋常ならぬ険しさで疲れ切った旅人をいやす憩いの茶屋として発展した。現在、阪奈道路、第二阪奈にをの交通の要所を譲り渡しその役目を終えた道ではあるが、古代の歴史を見る上では非常に重要な道なのである。そう考えるときっとシルクロードとはこの道を指したのだろうと思う。

さて、道を語るとすれば、それは勾配でしかない。彼の道の勾配をたとえる言葉を探そうにも見あたらない。勾配のすさまじさを伝える写真を撮ろうにもそれを伝える事は出来ない。そこを通った人間のみがその勾配を知る事ができる。そんな道であった。峠直前あたりにさしかかると夕立が降り始めあたりは薄暗くなった。その薄暗い雰囲気の中自転車を進ませようにもその時速は歩みに露程も変わらない。疲労はピークに達しており、背中に背負う鞄すら重く感じた。目が霞み南生駒で購入した聞茶は底を尽き昼飯をまともに食べなかった儂の体は極端なエネルギー不足となり脳へのブドウ糖の伝達が不足していたのであった。雨があまりにも酷くなったので急坂の木陰で休む。先は見えない。驚くほど、我々の努力をあざ笑うかのようなあまりにも高い場所に道路が見える。あまりにも急な角度の先で。それでも進まねばならない。我々は進んだ。

道中に目に付いた看板は

「通学路につき徐行」

我々にはあまりにもツッコむべき箇所がありすぎてどこからツッコめば良いのか分からない。「通学路」、果たして誰が通うのだろうか。「徐行」、徐行とは法規によると「いつでも止まることの出来る速度」と記憶している。歩くスピードにも負けそうなあの速度で徐行せよとは、我々を愚弄するにも程があるのではないか、とキレたくもなってきた。

今にも倒れそうな体を鞭打って艱難辛苦の末大阪府へと辿り着いた。


雨が降り薄暗さが正にこの峠を描写する


奥に見えるのは信貴生駒スカイライン、情緒もへったくれもない


わずかばかりの平地にわずかばかりの畑、ここでの生活は想像を絶するものであろう。
そして絶対に破られない制限速度20km/h


物寂しい古街道、奈良街道の最後の難所、暗峠はかく佇む

喜びの声は出なかった。声を出すにはあまりにも疲れすぎた。横にある自販機でアクエリアスを買いそれを飲み干す。その時、儂は苦難を乗り越えた事を実感した。甘美なるその味はあまりにも体が求めたものであった。

下り、この下りは前ヶ畑下りの18%を遙かに凌駕していた。正確な勾配は知らない、が20%は軽く越えているであろうその坂はブレーキを握るとその握りが強すぎて手が痛くなり、手のひらに豆が出来る程である。途中で休みを入れないと一気に下れない坂など生まれて初めてである。途中休んだ急カーブの先に自動車(バイク)のタイヤの跡があった。その跡は坂を最短に下り、そして橋の欄干の直前で一番濃い跡を残して・・・消えていた。あまりの勾配にブレーキが焼き切れてそのまま急転直下であったのだろう。

かくして我々はたった5kmの峠を1時間以上かけて越えたのであった。

・東大阪→(国道170号線、国道1号線)→枚方→(国道170号線)→高槻 30km

もはや語るべき事は無い。強いて言うならば、立体交差でのルーティングが困難であった。自動車であれば快適なのだろうが、自転車には大敵である。あまりにも儂は疲れすぎた。

かくしてサイクルコンピュータが示した今回のデータは以下の通りである。
平均時速 16.9km/h
総走行時間(実際に走っていた時間) 6:30:07
走行距離 110.70km

実際は平均で20km/h以上は出していたはずだが、峠越えで大ブレーキとなって16km台まで落ち込んだ。

暗峠は実際には関西ではメジャーなハイキングコースの一つに挙げられている。その為に休日などは多くのハイカーが訪れるらしいが、自転車で訪れる人間は少ないであろう。というか自転車で来られる物ならば来てみろ!と言いたい。この峠を越える事が出来た儂にはたいていの峠は怖くなくなった。何でもかかってこいと言いたくなる。10%を越える急坂もなんのその!という感じである。

オマケ


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